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3. ナムチュ・ワンデン

カーラチャクラのシンボルとしてナムチュ・ワンデンは、チベット寺院の壁や経典の表紙に描かれたり、チベット仏教徒の護符として広く用いられている。 ナムチュ・ワンデンは「十種の自在を具える」という意味で、チベットに伝えられたるランチャ文字の梵字、Ham, Kshah,Ma,La,Va,Ra,Ya、の七文字を合成したものである。 これらをH,Ksh,M,L,V,R,Y,の七つの子音とKshahの中にある半月の形をした荘厳点【visaarge】とh,Ham,の中にある丸い形をした空点【anusvaara】と母音aに分解し全体で十種の要素を構成する。 頂上部の空点の上から蛇のような形をして昇っているナーダ点をいれると十一種。

次の十種の構成要素は”外”なるカーラチャクラを表す。

これで、器世間、衆生世間を象徴し、仏教の伝統的な世界観である須弥山世界観を受け継ぐ。 須弥山世界は天文学的な数字の非常に長い年月【kalpa】(劫)の周期で生成と消滅を繰り返す。 世界の終末には、劫火が発生し、須弥山世界とその中に住むものたちは、全て焼き尽くされてしまい、ただ虚空だけとなる。 そこに住んでいた一部のものは、その時涅槃に入り、一部のものは、他の世界に転生する。 そして再び世界が生成する時、先ず最初に虚空から風が生じ、風から火、火から水、水から地、の四大が生成し、その四大によって須弥山と四大陸である東方の東勝身洲(半円形 風を表す)、南方に南せん部洲(三角形 火を表す)、西方に西牛貨洲(円形 水を表す形)、北方に北倶廬洲(四角形 地を表す形)が形成され須弥山世界が出来上がっていく。 こうして器世間が完成すると他の世界(この大宇宙には須弥山世界と同じ世界が無数にあると考えられていた)から、衆生が再び住み着いて活動をはじめる。 最初は、心のみで身体を持たない無色界の衆生(精神的な活動のみ)が出現し、次に、肉体を持つ色界の衆生が出現し、さらに次に、煩悩を持って活動する欲界の衆生が出現し、悪業を積み重ねていく中で三悪道が出現し、地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人・天の六道に生きとし生きるものたちが輪廻していく。 まさにこのような時間と世界(存在)のありようがカーラチャクラなのである。 時間(カーラ)は、あらゆる存在(チャクラ)の中にあり、あらゆる存在(チャクラ)は、時間(カーラ)の中にある。 このような関係は、仏と一切の生きとし生きるもの関係についてもいえる。 仏は一切の生きとし生きるものの中にあり、一切の生きとし生きるものは、仏の中にある。 本来、生きとし生きるものは全て仏性を有し、誰でも仏に成る可能性をもっている…一切悉有仏性。 その仏性が誰にも有るため悟りを得ようとする心…菩提心が生じ、その菩提心を強固なものにして修業を実践することによって悟りを得ることができる。 またナムチュ・ワンデンは、”内”なるカーラチャクラを表す。 十種の要素は、それぞれ、修業者の身体を構成する四大である風=額、火=喉、水=心臓、地=臍、そして、背骨、秘処、中央と右と左の脈路、そして大楽を象徴し、身体構造と関連づけられる。 そして又、カーラチャクラの身体とも対応づけられる。 さらにまたナムチュ・ワンデンは、”他”なるカーラチャクラを表す。 十種の要素によって世間の灌頂である十灌頂を象徴し、ナーダ点によって出世間の灌頂を象徴する。 (2000/4/1記)

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